
皆さんこんにちは、バリ歴史ツアーのスアルタです。今回はバリヒンドゥー教徒にとってのヤシの実の意味のことをご紹介したいと思います。バリ島に遊びに行くと、田んぼの風景以外に、様々な場所で椰子の木の風景も沢山見ることができます。バリ人にとって椰子の木というのは、ただの木ではなく、とても重要な植物とされています。毎日の生活を支える以外にも、お祭りや宗教儀式でも、椰子の葉っぱや実が沢山使われます。その為、椰子の木というのはとても重要な植物と考えられます。ではなぜバリヒンドゥー教徒は沢山ヤシの実を使うのでしょうか?これからご紹介したいと思います。ぜひ最後まで、読んでください。
はじめ
バリ島のヒンドゥー教徒は日常生活の中で宗教儀式から切り離されることはないです。毎日お寺や神聖な場所にお供え物などを捧げたりします。従って、宗教儀式はバリ島の人々の暮らしの一部であり、バリヒンドゥー教の枠組みの一部なのです。宗教儀式道具には通常、葉、茎、花、種子、果実など植物の特定の部分が使用されます。これらの果物の中で、ヤシの実は宗教儀式に必ず使われる果物になります。
ヤシの実の意味は、行われる儀式の種類によって異なります。若いヤシの実を使う儀式もあり、古いヤシの実を使う儀式もあります。バリ島の様々なヒンドゥー教の儀式で使用されるヤシの実は11種類あります。
バリ語は、
1. nyuh mulungと呼ばれるヤシの実。
2. nyuh Bojog と呼ばれるヤシの実。
3. nyuh Rangda / nyuh Binginと呼ばれるヤシの実。
4. nyuh harimauと呼ばれるヤシの実。
5. nyuh bejulitと呼ばれるヤシの実。
6. nyuh suryaと呼ばれるヤシの実。
7. nyuh Sudamalaと呼ばれるヤシの実。
8. nyuh udangと呼ばれるヤシの実。
9. nyuh gadingと呼ばれるヤシの実。
10. nyuh bulan と呼ばれるヤシの実。
11. nyuh saringanと呼ばれるヤシの実になります。
バリ人にとって椰子の木は生命の木と呼ばれています。椰子の木は多目的植物であり、その全ての部分が人間の生活に利用できる植物であるからです。根、茎、葉、果実など、全てが人間の生活のニーズを満たすために利用できます。バリヒンドゥー教徒にとって、椰子の木は日々のニーズを満たすために使用されるだけではなく、様々な宗教儀式でも重要な役割を果たします。ですから、椰子の木というのはとても大事な木と考えられます。


宗教儀式におけるヤシの実の意味と哲学
宗教儀式において様々な種類のヤシの実を使用する意味と哲学は、行われる儀式の目的に応じて異なります。しかし、大規模な宗教儀式では、通常、全方位を守る神々の崇拝のシンボルとして使用されます。全方位の神々は(デワタナワサンガ)と呼ばれ、全方位のバランスを守る神々という意味です。三神一体の神々の他に、全方位を守る9人の神々もバリヒンドゥー教の宗教概念においてもっとも重要な神々になります。
全方位の地球のバランスを守る9人の神々は;
- 東はiswara神、(白い色)nyuh bulanと呼ばれるヤシの実を象徴されます。
- 南東はmaheswara神、(ピンク色)nyuh suryaと呼ばれるヤシの実を象徴されます。
- 南はbrahma神、(赤い色)nyuh udangと呼ばれるヤシの実を象徴されます。
- 南西はludra神、(オレンジ色)nyuh rangdaと呼ばれるヤシの実を象徴されます。
- 西はmahadewa神、(黄色い色)nyuh gadingと呼ばれるヤシの実を象徴されます。
- 西北はsankara神、(緑色)nyuh bojogと呼ばれるヤシの実を象徴されます。
- 北はwisnu神、(黒い色)nyuh mulungと呼ばれるヤシの実を象徴されます。
- 北東はsambu神、(灰色)nyuh bejulitと呼ばれるヤシの実を象徴されます。
- 真ん中はsiwa神、(白黄色黒赤の色)nyuh sudmalaと呼ばれるヤシの実を象徴されます。

色んな色のヤシの実↓




宗教儀式に使用されるヤシの実は古いヤシの実もあり、若いヤシの実もあります。古いヤシの実は宇宙の象徴を表し、若いヤシの実は地球の象徴を表します。
神話1
マデシデメンというお坊さんが書いた(フルワガマセサナ)という本には、黄色い色のヤシの実の木はブラフマー神様の頭の一つから生えた木だと言われています。
その本では、ブラフマー神が(ガネーシャ)又は(ガナ)と言われる神の神聖な知識の力を試していたと語られています。ブラフマー神はガナ神に頭がいくつあるかを推測するように頼みました。するとガナ神はブラフマー神に、あなたの頭の数が四つであると推測しましたが、実際には五つの頭がありました。5番目の頭はブラフマー神によって魔法の力で隠されました。その不正行為を知ったシワ神は、ブラフマー神の五つの頭を切り落とし、四つの頭を持つようになりました。切られた頭は地球上に落ち、黄色い色のヤシの実の木になりました。この神話によって、黄色い色のヤシの実はブラフマー神又は想像する神の頭と考えられているので、お葬式が行われる時に火葬した人の骨は全て黄色い色のヤシの実の中に入れて海に流します。想像する神様の頭に入れるという意味は、また改造されて生まれ変わりになるようにという意味があると考えられます。
神話2
indik rajah bunkakの聖典とkelapa tatwaの本では、ヤシの実の起源、様々な種類、利点について非常に分かりやすく説明されています。この聖典では、悪魔が撒き散らした毒の力によって全ての植物が汚染され、地球が破壊された時、地球上の人間の生活は悲惨なものになったと語られていました。その悪魔は(kala)と呼ばれます。Kalaはbuta dasangkara bumiと呼ばれる10人の使いがいます。これらの悪魔たちは植物を汚染しただけではなく、全ての人間と動物の生命を破壊しました。この残酷さを見て神々は怒り、シワ神はbagawan wraspatiというお坊さんを派遣して、地球上で起こっている原因と問題を調査させました。破壊された地球を見たbagawan wraspatiお坊さんは、その原因を知るために、宇宙のバランスを守る9人の守護神に向き瞑想をしました。全ての原因を調査した後、bagawan wraspatiお坊さんは世界を守る9人の守護神に、地球を汚染する毒を除去する力を与えるように頼みました。9人の守護神の力により、地球上には様々な種類の椰子の木が現れました。
東にはiswara神の力で、(白い色)nyuh bulanと呼ばれるヤシの木が誕生しました。南東にはmaheswara神の力で、(ピンク色)nyuh suryaと呼ばれるヤシの木が誕生しました。南にはbrahma神の力で、(赤い色)nyuh udangと呼ばれるヤシの木が誕生しました。南西にはludra神の力で、(オレンジ色)nyuh rangdaと呼ばれるヤシの木が誕生しました。西にはmahadewa神の力で、(黄色い色)nyuh gadingと呼ばれるヤシの木が誕生しました。北西にはsankara神の力で、(緑色)nyuh bojogと呼ばれるヤシの木が誕生しました。北にはwisnu神の力で、(黒い色)nyuh mulungと呼ばれるヤシの木が誕生しました。北東にはsambu神の力で、(灰色)nyuh bejulitと呼ばれるヤシの木が誕生しました。真ん中はsiwa神の力で、(白黄色黒赤の色)nyuh sudamalaと呼ばれるヤシの木が誕生しました。
そして、ヤシの実から出た水が一つずつ地面に撒かれ、地面を汚染した毒が除去されます。ヤシの実の水の力によって、地球を汚染する全ての毒物がついに消え、地球は再び平和になりました。この神話のおかげで、ヤシの実はバリ島のあらゆる宗教儀式において非常に重要な果物となったのです。バリ島には様々な種類と色のヤシの実がありますが、宗教儀式で最もよく使われるのは黄色い色のヤシの実になります。これらの二つの聖典には、神話のことだけ書かれてあるのではなく、いろいろな機能と使用方法を備えた様々な種類のヤシの実も記載されています。
終わりに
バリ島の宗教儀式におけるヤシの実の役割は、神や宇宙の象徴としても使われる供物を補完することです。椰子の木は聖典に書いてあることによって、9人の守護神の力から生まれたので、バリヒンドゥー教徒はヤシの実の水にも宇宙と人間の魂の汚れを浄化する神聖な力があると信じています。そのため、お祭に使用されているお供え物や人間の魂を浄化する儀式などが行われる際には、ヤシの実はよく使われています。
このブログを通じて皆さんのバリ文化への理解が深まることができると幸いです。バリ歴史ツアーはバリ島の伝統文化を感じていただくツアーをやっているので、バリ島に旅行して遊びながらバリ島の伝統文化を感じたい場合は、是非バリ歴史ツアーのツアーを体験してください。最後まで読んで頂きありがとうございます。
By: スアルタ